第八話 出禁

   

「もう一度、やり直したいんです」

 

恐る恐る、2人の表情を見た。

 

 

「・・はあ??」

 

 

奥さんと、義母の表情が、

 

豹変した。

 

第七話 「謝罪」

 

「・・・何を言ってるの?」

 

「あなた何をしたかわかってるの?」

 

「あなたが逆の立場だったらどうするの?」

 

「離婚しかありません。」

 

妻が矢継ぎ早にまくし立てる。

 

「子供のためにも、父親が必要だと思うんだ」

 

あなたみたいな父親は・・」

 

「いない方がマシよ!!!」

 

「・・・・」

 

完全に怒らせてしまった。

 

子供がこちらを見ている。

 

いつもはしゃいでニコニコして元気一杯にそこらへんを駆け回っている子が、すぐに抱きついてくる子が、今回は我々の様子を伺いながら周りをウロウロしていた。

 

ただ事ではないというのは、子供心にもわかるのだろう。

 

「帰ってください」

 

僕は従うしかなかった。

 

玄関から出る間際、振り向くと、子供がジッとこちらを見つめていた。

 

何が起きているのか、全く理解できていないだろう。

 

思えば、さっきもそばにいたのに抱きしめる事もできなかった。

 

「・・・またね」

 

子「・・・・またね」

 

ずっと、僕を見つめていた。

 

子供に、また会いたい。

 

「ガシャン!!!」

 

「ガチャ!!」

 

玄関のドアがまるで早く出て行けと言わんばかりに

 

物凄い勢いで閉じられ、

 

思いっきりカギをかける音が鳴り響いた。

 

1回目の時とはまるで違った。

 

敵意が剥きだしであった。

 

僕は、完全に

 

敵として認定された

 

・・・絶望だ。

 

僕は家を後にし、バス停までとぼとぼと歩き始めた。

 

どうしよう・・

 

どうしたらいいんだろう・・・・

 

何も解決策が浮かばない・・・

 

途中に交番があった。

 

中には1人、警官が待機している。

 

ヒマそうだ。

 

・・いや、警察はヒマな方がいいか。

 

そのぶん治安がいいという事だ。

 

世間は平和だ。奥さんの田舎も平和だ。

 

僕だけが、緊急事態だ。どうしてこんなに気分が落ちるんだ。

 

・・・僕が平和を乱しているのか

 

自分が悪者になるなんて思いもしなかった。

 

ため息しか出ない。

 

絶望だ。。

 

生きているのがツラい。

 

「はぁ・・・」

 

僕はため息をついた。

 

空はこんなに明るい色をしているのに

 

今は昼下がりで、とても気持ちのいい気候なのに

 

町はこんなに平和そうなのに

 

僕だけが、どんよりとしていた。

 

「・・・死にたい」

 

そう思った次の瞬間、

 

「ドゥルルルルッッッ」

 

突然、後ろからバイクの音がした。

 

「すみませーん!!」

 

誰かが僕の真横からバイクに乗ったまま

声をかけてきた。

 

・・・誰だ?

 

こんな田舎に僕を知っているのは

 

奥さんとその家族しか知らない。

 

振り向くと、

 

・・・先ほど交番にいた警官だった。

 

警官「先ほどじっと交番を見ていたので」

 

警官「何かあったのかなーって」

 

警官「どうかされましたーーー???」

 

ニコニコしながら話しかけてきた。

 

「・・・!!」

 

僕が交番を見ていたのと同様、

 

警官も

 

・・僕を観察していたのだ!

 

僕の思いつめた表情を見て、

 

ただならぬ空気を感じたのだろうか。

 

警官『・・・こいつ、何かしでかすな』

 

だから声をかけてきたのだ。

 

警官の屈託のない明るい笑顔の裏に隠された

 

怪しい奴は見逃さないぞという

 

僕を警戒している真意を考えると、ゾッとした。

 

僕は、何かしでかしそうな顔をしていたのか・・・

 

おそるべき、観察力

 

おそるべき、危険察知能力

 

おそるべし、国家権力

 

でも僕は・・・

 

離婚で揉めている妻の実家に出向き

 

子供を奪い

 

刃傷沙汰を起こすような

 

そんな人間じゃない!

 

話したい気分ではないが

 

きちんと対応しないと。

 

走り去ると怪しまれる。

 

「あ・・・」

 

「だ、だいじょうぶです・・」

 

そう言って、僕は声をかけられる前と同じ歩調で歩き去った。

 

なるべく平静を装いながら。

 

警官は、

 

黙って

 

僕を見送った。

 

・・日本の警察は優秀だ。

 

彼のような優秀な警官がいる限り

 

この国はきっと大丈夫だ。

 

 

しばらく休む事を会社に説明するために、一旦東京へ戻ることにした。

 

駅の待合室で、小さい子供と手を繋いで歩いている家族連れをたくさん見かけた。

 

・・楽しそうだ。

 

ああ・・

 

涙が止まらない。

 

思わず、奥さんにラインを送った。

 

「今家族連れを見ています。とてもつらい。僕が壊してしまいました。本当にごめんなさい」

 

返事は、なかった。

 

出社当日、上司に説明するために、早速メールで面談依頼をした。

 

「ご相談したい事があります」

 

「夕方以降お時間いただけますでしょうか」

 

上司は、すぐにセッティングをしてくれた。

会議室内で、2人で話をした。

 

「実は・・トラブルが起きて妻が帰ってしまいました」

 

「話をするために、しばらく休ませてください」

 

「そうだったのか、、君がそんな問題を抱えてるなんて全く気がつかなかったよ」

 

「わかった。忙しい時期だが心配するな」

 

「うまくいくように頑張れ」

 

上司の心遣いに感謝した

 

翌日から、謝罪行脚が始まった。

 

連休でもない平日の真っ昼間。

 

奥さんに連絡をせずに、飛び込みだ。

 

その日は父も同行してくれた。

 

彼女の実家に到着し、父が玄関に立つ。

 

父「ごめんください」

 

奥さんが、子供にお昼ご飯を食べさせている最中だった。

 

義母と奥さんは、突然の父の来訪に驚いていた。

 

窓から、一匹の蝶が部屋に入り込んできた。

 

子「ちょうちょ、ちょうちょ!!」

 

子供が蝶を指差して叫んでいた。

 

父「おおぉ、かわいいねえぇ」

 

久しぶりに孫と会えて、父の顔はほころんだ。

 

父「上がってもよろしいですかな」

 

義母「・・・どうぞ」

 

義母と奥さんは、突然の来訪に日常の平和を乱され、明らかに不機嫌そうだった。

父と僕は居間に腰掛け、

奥さんに向かって言った。

 

体の調子はどうですかな」

 

「・・・大丈夫です」

 

「うんうん、そうですか」

 

「あなたは、本当にいい嫁だと思う。気立ても良いし、僕ら夫婦にもいつもよくしてくれていたし。帰省するときはうちに真っ先に遊びに来てくれる。僕はあなたを本当の娘と思っているよ」

 

父「それだけに、あなたのその時の辛かった気持ちを思うと、本当に・・・言葉にならない・・」

 

父の言葉が、詰まった。

 

涙声だった。

 

父は奥さんの気持ちに共感し、泣いていた。

 

生まれて初めて見る、父の涙だった。

 

奥さんは、黙って下を向いていた。

 

義母が、代わりに口を開く

 

義母「この子も、お父さんのお家に遊びに行ったらこんな料理を食べさせてくれた。こんなプレゼントを頂いた、こんな事してくれた、あんな事してくれたと、いつも嬉しそうに話していました」

 

父「ほう、そうですか、それはありがたいですね」

 

ほんの少し、和やかな雰囲気に包まれた。

 

だが、それはほんの一瞬であった。

 

義母「でも」

 

義母の表情が変わった。

 

「『でも』がつくんですよ」

 

「この人のせいで、全てが壊れました」

 

僕をにらみ、そして微笑みながら、

 

義母「楽しかった?私たちを騙せて」

 

「どんな気持ちだった?」

 

「うまく騙せてシメシメとか思ってたの?」

 

楽しい訳なんてない。全く何も考えてない。

 

僕が、、、義母を壊している。

 

義母「娘は、離婚します」

 

父「その事なんですが」

 

「離婚する、という決断を、もう少し待ってくれないですか」

 

「ここはひとつ、子供のためにも。少し、考えて頂けないですか。こいつも反省しております」

 

「どうか、お願いします」

 

「・・待つことによって、私のメリットはなんなの?」

 

「・・・」

 

僕は、固まった。

 

返事をしないでいると、彼女は話し始めた。

 

「私や子供が待っている間、この人は女の人と・・」

 

「この人は・・ナンパをしていたんです」

 

彼女は涙ぐんでいた。

 

涙をこらえて、話を続けていた。

 

「子供が熱が出てるから外出するのやめてと言った時、この人はもの凄く嫌そうな顔をしていました」

 

「その日、この人は女の人とのデートの約束があったんです」

 

「それは違う!」

 

その日、確かにデートがあった。だが、子供が熱を出したので僕は行くのをもともと辞めるつもりでいた。

 

だが、デートに行く女の子にラインでキャンセルの連絡をする前に、奥さんから行くのを辞めてと言われた。

 

ラインで確認すると、時系列では奥さんが辞めてと言ってから、僕はキャンセルしたことになる。

 

辞めてと言ったから、僕が渋々辞めたと奥さんは思い込んでいた。

 

僕は嫌な顔なんて全くしていなかった。辞めて当然だと考えていたからだ。

 

だが、そんな証拠なんかあるはずもない。

 

奥さんはもう聞く耳を持ってくれなかった。

 

彼女にとって、僕は子供の具合が悪くても外の女と平気で会う最低の父親。

 

子供と一緒にいる価値のない父親。

 

むしろ、いない方が良い父親。

 

ナンパ夫だけでなく、
ゲスな父親像が完全に出来上がっていた。

 

彼女は興奮していた。

 

「こんな事されたのに、なんで離婚しちゃいけないんですか!!!」

 

父に対して吠えた。

 

父「離婚するなって言ってるんじゃないよ」

 

「待ってくれって言ってるんだ」

 

「嫌です!!!!!!」

 

父「むむぅ・・」

 

義母「この子を楽にしてやってください!」

 

父「とにかく、一旦考えておいてください。。よろしくお願いします」

 

義母「こちらこそ離婚の件、宜しくお願いします!!」

 

義母の甲高い、一歩も譲らない決意を感じる、強い口調でこの日の訪問は終わった。

 

夜にラインが届いた。

 

「何も連絡しないで来られていい迷惑」

 

その後も、何回か1人で行った。

 

だが、彼女は僕がくる時間を見計らって出掛けたり、居留守を使うようになった。

 

ある日、奥さんからラインが届いた

 

母が、もうあなたが来ても家に入れないとのことです」

 

 

僕は、彼女の実家から出禁になった。

 

 

続く

 

 

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